「なぜ?」で深掘りしてリサーチの精度を上げる方法

ブランディングに欠かせない顧客リサーチや競合リサーチ、また、お仕事にまつわる要件定義のヒアリングの場など、誰かと深いお話をしていると事前に想定していた以上の収穫を得られることが多々あります。

代表的なものが、もっと深掘りしたくなる「疑問点」に気づくことではないでしょうか。「気づきを得る」なんて言ったりしますよね。

こうした「新たな気づき」に対して、どんなアクションを取っていますか?へ〜、こんな視点もあるんだ、と言葉そのままで受け止めるのは、実はとってももったいないんです。

ブランディングサポートやECコンサルでは顧客リサーチなどアンケート内容などから得た気づきをどうやって深掘りするのかもお伝えしています。その中のとある方法を記事にまとめてみました。

目次

「気づき」や「違和感」は新しい視点を得られるターニングポイント

違和感を感じたり「後で調べてみよう!」と思えること自体、特別な経験です。深掘りすればもっと違った角度から原因を発見できたり、新しい施策を思いついたりできます。まさに、気づかなければ辿り着けなかった・・・ターニングポイントなんです。

でも、アンケートやインタビューなどのコミュニケーションで出てくる言葉は、どんなに設問が丁寧でも表面的である場合が多いのです。例えば自分がアンケートに回答するシーンを思い返してみてください。

  • フォームに収まるように文章量を削った
  • 読みやすいように丁寧に作文した
  • アンケートがどう活用されるかわらからいので適当に回答した
  • 時間がない中でパパッと書いた

このような経験はないでしょうか?こうなると、回答結果には表面的な言葉しか反映されない、回答者本人が重要だと思わないことには触れてももらえないのです。

インタビュー形式でも同じことが言えます。

  • インタビュアーと初対面だから、取り繕ってしまった
  • 落ち着かない雰囲気だったので詳しい話はできなかった
  • 自分の内面を曝け出すのは恥ずかしいから、適当に答えた
  • 答えても反応が返ってこないなら重要じゃないと思うのでそれ以上の話はしなかった

このような些細な理由で、こちらが求める回答を得られないことが多々あります。

同じ会話方式のヒアリングであるならさらに、
「ここまで話したんだからあとは察してよ」とか「プロだからわかるでしょ」「お金を払っているんだから適当にやっといてよ」などという感情も見え隠れします。私も実際に言われたことがあります(涙)

ここで重要なのは、

  • 「そういうものだ」と認識すること
  • だからこそ質問をさらに重ねて、お相手の心の中を深掘りする姿勢

の2つだと考えています。

情報は細部にわたって自分で取りにいくものだ、ということですね。この意識を持っていれば、自然に「気づき」を得る機会も増え、さらに追加質問ができるはずなんです。

アンケート形式なら「もっと詳しくお話を伺いたいのでインタビューさせて欲しい」と依頼する。
インタビュー中のことなら、その場で追加質問を練っていく。

「これって具体的にどういうことだろう?」「その背景はなんだろう?」という意識で質問を繰り返していくことで、回答の真意をできるだけ深掘りすることが、直接リサーチの醍醐味です。

問題の真の原因を深掘りするには?

やたらと「なんで?」「どうして?」と聞いても真意にはたどりり着けません。こういう場合に便利なのが「なぜなぜ分析法」。ある回答に対して「それはどうして?」と5回繰り返すと、問題の真の原因に近づける、という方法です。

この方法はトヨタ式の要因解析フレームワークを参考にしています。

トヨタ式「なぜなぜ分析」とは

トヨタ自動車発祥のカイゼン活動ツールで、「なぜ」を5回程度繰り返し質問することで問題の根本原因を追究する手法。問題の再発を防止するために、根本的な原因を徹底的に洗い出すための考え方です。

もともとは「カイゼン」のために生み出されたフレームワークですが、問題の根本を洗い出す手法として、ヒアリングやインタビューにも応用ができます。

とても便利なフレームワークですが、インタビューなどに使う時にはちょっとした注意が必要。
それは「会話」を気持ちよく成立させることです。

5回も「なぜ」を繰り返し質問されると、自己肯定感が徐々に下がったり不安を煽ったりする場合があります。日常会話でも、何度も「それってどうして?」と繰り返し聞かれると、会話を楽しむどころか「うっとうしいわ〜」と思いますよね。

インタビューのように会話のなかから相手の真意を探る場面では、

  • 様子を見ながら3回程度でとどめる
  • 「なぜ」だけでなく「具体的には?」「詳しく教えてください」などさまざまなバリュエーションを使う
  • 適宜話題を振り替えるする

などの気遣いや、会話のテンポが大事です。
※この記事の後半で会話のコツをお伝えします!

顧客理解に「気づき」の深掘りが役にたった事例

では、どんなふうに「なぜなぜ分析」をすればいいのかサンプルを見てみましょう。

まずはいま困っている大きな問題に対して「具体的に」どんな状態になっているかを確認するところから始めます。どうしてその状態になったのか「なぜ」を数回繰り返していくのです。

会話の方向を決めるために仮説は必要ですが、聞き手の「想像」を含めた質問にしないこともコツです。必ず事実だけに触れること。だから、もし顧客リサーチの場合にはインタビューさせていただくお客さまのリアルな声を聞き取る姿勢を大切にしてください。

アクセサリーショップからのお悩み相談

現象:3年前から比べると売上が落ちてきた

  • 具体的に具体的に、どのような商品が売れなくなりましたか?

    「大ぶりのピアスが売れなくなりました」
  • これまで買ってくださっていたお客さまに何か変化は見られましたか?

    「お客さまが大きなピアスを身につけなくなったようです」
  • 大きなピアスが必要なくなったということですね。それはどうしてでしょうか?

    「最近はリモート会議の機会が減ったために、オンライン映えする大ぶりなサイズ感が求められなくなったようです」
  • なるほど、大きなピアスをつけなければいけない機会が減ったのですね。では最近はどんなサイズ感が好まれているのでしょうか?

    「言われてみれば、考えていなかったです。売れなくなったのでまた売れるようにするのはどうしたらいいかと悩んでいました」
  • つまり、ショップではこれまで売れ行きが良かったため大ぶりピアスを中心に品揃えされていたのでしょうか?

    「その通りです。売れるものだけを作った方が合理的だと考えていました」

この事例では、「ピアスが売れない」という現象に対して具体的に掘り下げて行くことで、社会的なニーズの変化と自分のウィークポイントを知り、今後のピアスの品揃えの方向性を考えるきっかけになっています。

チラシデザインの発注にまつわるヒアリング

現象:発注するならチラシデザインを丸投げしたい

  • 具体的にどんな作業を丸投げされたいですか?

    「作りたい目的ははっきりしているので、形にする部分は全部お任せしたい」
  • デザインを組み立てる部分はお任せいただけるということですね。デザインに必要な情報はご準備いただけますか?

    「忙しいから手が回らないんだ」
  • 販促にはさまざまな準備が必要な時期ですよね。ところでどのような点で時間を取られそうだと感じていらっしゃいますか?

    「デザイナーさんのいう通りに情報を集めるくらいなら出来るけど、自信のないデザイン案を作ってもきっと大幅に変更されてしまう。どうせ使われないことにかける時間はもったいないと感じるよ。それなら最初からデザイナーさんに全て委ねたい」
  • おっしゃる通り、大幅な変更になると時間が無駄になったように感じてしまいますね。それではデザインに必要な事前情報をリストにしておりますので、ご準備いただけますか?

    「リストがあるとわかりやすいね!」

デザイナーにとって、丸投げされると要件定義が足りなくて何度もやり直し作業が発生するリスクがあります。このケースでは、「丸投げ」という言葉の裏側に「デザインへの知識料や経験値による価値」を評価しての発注であることが垣間見られます。また、デザインに着手する前に何が必要なのか漠然としていた点も問題でした。

初回のお客様とは、制作に対するお客さまのスタンスを確認しておくこと・必要な情報や工程を見える化して共有することで双方の思い込みを擦り合わせることができます。丁寧に対応すると差し戻しのリスクが軽減できるのではないでしょうか。

「なぜなぜ分析」の精度を上げる会話テクニック

ここで、「なぜなぜ分析」をリサーチに取り入れるコツを整理しておきます。

なぜなぜ分絵の手順
  • 現象=深掘りしたい問題を1つに絞る
  • 具体的な状況を確認する
  • なぜその状況になったのか質問を3〜5回繰り返す

あくまで会話形式で進めますので、威圧感を与えたり退屈させては思うような本音を引き出せません。そこで次のような点に注意しながら進行します。

  • 必ず1つの問題について深掘りする。複数の問題を同時に分析しない。
  • 相手の反応を観察し、不快にさせないよう配慮する
  • 「なぜ」だけでなく、「どのように」「何が」「具体的には?」などバリエーションをつける
  • 共感や理解を示すコメントを挟む
  • 相手が考える時間を十分に取る。
  • 相手に語らせる:ずっとしゃべり続けてくれるタイプの人は、しゃべりながら脳内で整理して壁打ちしていることもあるので、適度に相槌を打ちながら最後まで聞いてみる
  • 非言語コミュニケーションの観察:表情や身振りにも注目する
  • 相手の言葉を別の表現で言い換えて、自分が理解できているか確認する
  • 途中で要因が複数でてきたら、そこから会話を分岐させて個別に「なぜ?」を繰り返す
  • かといって問題は独立して存在することはありません。他の要因とどのように作用しあっているか、連鎖的に捉えることも大切です

便利なツール

録音と文字起こし

メモを取ることに必死になると、相手の身振り手振りや表情を見落としてしまいます。ここは録音に頼ってしまうのがベストです。

スマホの録音機能やZoomなら録画しておきます。
文字起こしはAIを活用すれば時短になりますね。オススメのツールはこちら

マインドマップで仮説を展開する

会話を深掘りをするときに欠かせないのが「仮説を展開するツール」です。マインドマップ形式にするのが便利ですし、最適解だと思います。

何か疑問にぶつかったら、なぜ、なぜ、と繰り返しつつ、さらに枝分かれした質問をマインドマップで作っていく。だから、インタビューの時には髪とペンが欠かせませんし、オンラインミーティングでヒアリングするときにはマインドマップツールを開いていたりします。

そのまんま議事録になるところも便利なんですよ。

読者参加型エクササイズ:あなたの「気づき」を探る

なぜなぜ分析のスキルアップには、日常で気づく力を磨くことが近道です。

  • 最近の仕事や日常生活で、「意外な発見があった」と感じた瞬間を思い出してください。
  • その発見に至ったきっかけは何でしたか?
  • もし「なぜ」を5回繰り返すとしたら、どんな質問をしますか?
  • その「気づき」から、どのような新しいアイデアや行動が生まれそうですか?

こんな形で日々問答することで「気づき」のプロセスを振り返ることができます。

もっと詳しく知りたい時には

ブランディングやマーケティングのためのリサーチでは事象を深掘りしたい場面が多々起こります。どのように深掘りしたらいいのか、そのコツもブランディングサポートでお伝えしています。顧客リサーチしてみたい、お客さまへのヒアリングのコツが知りたい方はぜひお申し込みくださいね。

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この記事を書いた人

ブランディングデザイナー・Web集客コンサル
香川県生まれ。国立大学を卒業後大手調味料メーカーで11年間勤務し独立。現在2児の母。
ブランディング・コンテンツマーケ・デジタルマーケ・オンラインショップ構築・ロゴなどデザイン制作・ナレーションなどでスモールビジネス〜中小企業のサポートをしています。
きのこの山派です。

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