幻滅させない世界観と体験で濃いファンを作る
世界観と顧客体験の関係
世界観は目に見えるものだけでなく、五感全てで感じるものです。
だからこそ、世界観とお客さまの購買体験は切っても切れない関係となります。
CXという言葉を聞いたことはありますか?
Customer experienceの略語で、日本語では「顧客体験」と訳されます。
商品のサービスの検討段階から購入場面、利用に至るすべての過程での、お客さまと事業との接点で感じる体験のことです。
CXという言葉がこんなに浸透する以前は、単に「接触」とか「体験」という言葉で表現されていたような気がします。
お客さまは検討から購入に至るまでの間に、その商品・サービスに対するイメージを勝手に持ってしまいます。そして購入後にサービスを入手し体験していく中で、お客さまの中に出来上がっていたブランドに対するイメージが崩れ、幻滅してしまうこともよくある話です。
例えば、あなたもこんな経験はないでしょうか?
パッケージが素敵だから美味しいに違いない!
だけど買ってみたら自分好みじゃなかった。
勝手に抱いた幻想のようなイメージで購入後に幻滅されても・・・と思うかもしれません。
でも、あなたがお客さまの立場だったらどう思いますか?
五感で感じたことだけで判断するしかないので、どうしても自分の体験がブランドの印象に結びついてしまうんです。
逆に考えると、これをコントロールできるのが世界観なんです。
お客さまはどんなときに幻滅するのか
「幻滅」してしまうとき、お客さまには具体的にどんな心境の変化があるのでしょうか。
- CMが話題だったから食べに行った → 全然美味しくなくてがっかりした
- パッケージの表示に惹かれて買った → すぐ壊れて困った
- ネットショップで気に入ったから購入した → 届いたら箱が潰れていてショップの信頼度が下がった
- 面白そうなセミナーに参加したいと思った → 申し込みフォームの記入欄が多すぎて面倒になり参加を諦めた
このような経験の一つや二つ、誰にでもあると思います。
買うまではワクワクドキドキしていたはず。なのに、購入後に「おもってたんとちがう」「こんなはずじゃなかった」と幻滅するポイントは以外に多いんです。
例えば
- 商品写真と実材の商品の作りにギャップがある
- 使い方がわかりにくい
- 購入後にフォローが何もない
- 不具合があっても問い合わせ先がわからない
- 電話がなかなか繋がらない
- 返信が遅い
このような「手間だから省いてしまおう」と考えるちょっとした「丁寧さ」は、お客さまにとっては「あって当然だ」と信じている品質の担保やアフターフォローなのかもしれません。それが「ない」という時点でもう、ブランドのファン化路線から外れてしまうのです。
ビジネスはバザーじゃないので、商品を買ってもらったら終わり、ではありません。
何度も買ってもらう、違う商品も利用してもらう、知人に紹介してもらう、繰り返し利用してもらうことでビジネスは成長していけます。そのためには、「繰り返し利用したい」と思える世界観を、購入前から購入後の体験でも一貫して意識しておく必要があるんです。
「手間だから省く」ではなく、お客さまの体験に欠かせないものかどうかという視点でサービスを設計して、ブランドに夢中になってもらえる世界観を作る必要がありそうです。
ひとり起業にもあるかもしれない「幻滅ポイント」
主婦のひとり起業の場合でも、同じことが起きる可能性は十分あるんです。
例えば
- 講座を販売するLPを見て「自分にぴったりだ」と感じたのに、いざ申し込んで講師と面談してみたら「こんなにきつい人だったのか」と幻滅してしまう
- ハンドメイド作品を気に入って購入したら、ショップサイトで見た商品写真よりチープだった
- 雰囲気のいいサロンを見つけたのに、行ってみたら個人宅のリビングだった
前述の「どんな時に幻滅するか」に当てはまることばかりですね。
SNSなどで、消費者を守るための注意喚起として
- 勢いで購入するのではなく、少し時間をおいて冷静になりましょう
- レビューを確認しましょう
- 運営者や販売者情報を確認しましょう
などの注意喚起を見かけたことはないでしょうか。
お客さまご自身も、注意深くお買い物をされています。
それでも起こってしまうミスマッチは、実は世界観を整えることで防ぐことができるんです。
先ほどの例で考えてみると・・・
LPと講師の雰囲気が違う
講師業は人同士なので合う合わないはどうしてもあります。「きつい人」が悪いわけではなく、「きつい」と感じてしまう受け手側の価値観。自分に合わないから「こんなはずじゃなかった」と思われるのかもしれません。
あるいは、目標完遂のためにあえてスパルタにしたいという場合もあるかもしれませんね。
どちらにしても、事前に講座の雰囲気がわかる発信をすることがミスマッチ防止につながります。
例えば、
- 講座のスタイルや意図が伝わるような「教育的」な発信
- 講座の様子を切り抜きで発信
- 利用者のインタビュー動画を掲載
- LPに講師本人が出演するメッセージ動画を載せる
- 講座にかける思いを常日頃からSNSで投稿
など、「人柄と想い」=「講座の世界観」が伝わるような発信を心がけてみてはいかがでしょうか。
ハンドメイド作品が商品写真よりチープだった
これは、注意しなければ返金やクレームになってしまい、お客さまも自分も疲弊してしまいます。
ハンドメイド品に対する価値観は人それぞれ。安くて当然と感じる方もいれば、手が掛かっているからこそ高くて当然と受け取る人もいます。
前者の場合は、
「安そうなパーツを組み合わせただけでなぜこんなに高いのか?」という価値観や
「この価格を出せば、お店でもっと素敵な商品を買えたかもしれない」という後悔が根底にあるのかもしれません。
そこで、作家としてどのような想いをこめて制作しているのかを日頃から発信することで、作品の背景を理解した上で本当に欲しいと思ってもらえる方に購入いただける確率があがりますね。
またこの発信が揺るぎないファンを増やしておくことにもつながります。
なぜファンがたくさんいることが助けになるかというと、ハンドメイド作家の場合はレビューやコメントが次のお客さまの呼水になることが多々あります。そこでネガティブなレビューをつけられてしまうと、売上が下がってしまうリスクがありますよね。
でも、揺るぎないファンがたくさんいると、そのレビューをファーストビューから隠してしまうかのように、どんどんいいレビューを投稿してくれるんです。作家の想いや手間、作業の緻密さ、クオリティ、使い心地、やりとりの気持ちよさなど、さまざまなポイントで褒めコメントをいただけると、新しいお客さまにとっても最高の検討材料になります。
作品の価値観を理解してもらい、揺るぎないファンを育てるためにできること
視覚的な世界観
- 作品を使うことで感じる世界観をぎゅっと凝縮した商品写真
- SNSなどで投稿する画像・動画の背景や小物まで気を配る
- ロゴプレートをつけたりパッケージや同梱物にもロゴを添える
教育的な発信
- どんなお客さまのために作っているのか
- どんなシーンで使ってほしいのか
- そのために仕入れで気を配っていること
- デザインなど制作で力をいれていること
- 梱包の丁寧さ
- レビューの紹介
ファン化につながる発送
- おまけをつける
- ショップカードをつける
- メッセージカードを添える
- 次回使用できるクーポンをつける
- オリジナルの包装にこだわる
レビューをもらえる環境づくり
- どうやってレビューが投稿できるのか解説したお願いシートを添える
- 購入後のフォローメールにレビューリンクをつける
- ショップカードにレビューページのQRコードをつける
- レビューにお礼コメントをつける
- レビューが集まりやすいプラットフォームを利用する
このような工夫で、作品の世界観に取り込んでいくことができます。
雰囲気のいいサロンが個人宅のリビングだった
開業して間もないサロンや教室だと、リビングに施術スペースを作っている場合も多いのではないでしょうか。
友人でもない人のリビングで施術を受けても全く寛げません。「非日常」にお金を出しているつもりのお客さまにとってみたら、「選び間違えたな」「素敵な写真に騙されたな」と感じても当然です。
「どうしても特別な施術スペースを準備できない」というのは事業者側の事情。
- それでも来てくれる方を理想のお客さまと設定する
- 正直に、リビングの状態がわかる説明を事前に行う
- できるだけリビングから生活感を省く
- 生活感を逆手にとって、温かみを売りにする
などの工夫はできるのではないでしょうか。
また、施術ができるレンタルスペースも増えていますから、探してみるのも一手ですね。
背伸びをしない世界観を
LPや商品ページなどを見て、あるいはパッケージを手に取ってお客さまが抱いてしまう「イメージ」と、本来のサービスの内容のミスマッチを防ぐためには
- あらかじめ事業や商品の価値を世界観に落とし込んで表現すること
- 事業側が背伸びしないこと
が重要です。
ひとり起業の場合は事業主=ブランドという側面もあるので、絶対に「背伸び」をしてはいけないんです。
見た目だけしか考えないと、背伸びしたりキラキラさせてみたりしちゃっても、いつかほころびが出てしまいます。
お客さまに正直で、自分自身も無理のない世界観とは
- 自然体の自分に近く、自分の主張したいことを無理なく伝えられる
- お客さまにとって「憧れる」とか「目指したい」とか「信用できる」などポジティブな価値を感じてもらえる
- 広告でもLPでも面談でもサービス本体でも同じ雰囲気で接し続けられる
つまり、世界観は格好をつけるためのものではないということですね。
自分が苦しくならないために、そしてまた、お客さまに誤解なく価値を感じ続けてもらうために、世界観を活用していきましょう!
まとめ
中身より見た目だけこだわってお客さまが離れてしまう、自分のこだわりだけが先行してお客さまが置いてけぼりになる、そんな事故を防ぐために、世界観の「扱い方」にこそこだわりたいですね。
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