今すぐやめて!「自分自身」をペルソナにするリスク
女性起業家の方なら、商品やサービスを売るには「ペルソナ」が欠かせないということはご存知のはず。
いきなり設定するのは難しいから「○○で悩んでいた過去の自分」をペルソナにするといいよね
という話を耳にしたことはないでしょうか?確かに、自分自身のケースを考えればいいなら想像しやすいですよね・・・でも本当に自分をペルソナにしていいのか?と疑問に感じたことはないですか?実はリスクが隠れているんです。
SNSを見ていても「ペルソナは自分です」と言っている人が意外に多いなと思います。
「売れない」とお悩みの方は、「過去の自分」と「買ってくれるお客さま」がバチッとハマっていないのかもしれません。
そこで、どうして自分をペルソナにしたらリスクがあるのかを解説します。
ペルソナってなに?
マーケティングでは、ペルソナとは「商品やサービスを使って欲しい架空のお客さま」だと定義します。
商品を届けたいターゲット集団の中の「特定のひとり」を想定することで、そのひとりに向けてより具体的な販促ができます。するとペルソナさんと似た境遇の人に刺さりやすくなるのです。
ペルソナとはツール(手法)である
実は私はこの点について、「ペルソナはツール」だと言い続けています。ペルソナ像をどんなに詳しく設定しても、同じ人間は存在しません。でも詳しく決めすぎると、その存在に気持ちも時間も施策も引きずられてしまうんです。
ペルソナは、一緒にサービスを運営する人たちが共通言語として使うツールであり、サービス設計や販促立案に欠かせない基準となります。そこでペルソナは「マーケティングのために見込み客の姿を設定する手法」だと捉えると、冷静に捉えられるようになります。
なぜ女性起業家には「過去の自分」をペルソナにすることが推奨されているのか
答えは一つ。「起業の近道は再現性あるコンテンツだから」です。
自分の過去の失敗、乗り越えてきた辛い経験をコンテンツにすることで、今現在同じ悩みを抱えている人にとって再現性の高いサービスを構築できる という考え方があります。
例えば
・100kgあった体重をジムに通うことなくダイエットに成功した話
・顔面いっぱいのニキビを2週間で治した話
・人生で一度もモテなかったけれど結婚できた話
・目立った強みがないのに集客に成功した話
などなど、ちょっと聞いてみたくなるテーマが該当します。
これに則って考えると、ペルソナはそのまんま「過去の自分」にしかなりませんね。困っている人の気持ちが100%理解できることが前提なので、このペルソナをずらすと商品価値も無くなってしまいます。
このケース以外は、自分をペルソナにすべきではありません。
また、長期的に考えると自分の経験を商品にする場合にも「ペルソナを自分に設定し続ける」ことにはリスクがあるのです。
過去の自分がペルソナだと、どんなデメリットがあるのか
まず確認しておきたいのが、ペルソナ設定のメリットです。
- 顧客イメージを正確に持てる
- お客さまのニーズや悩み、行動を想像しやすくなる
- お客さま視点でマーケティング戦略を考えられる
と、設定しておくと商品やサービスの開発にも販促にも便利だろうなということが想像できますね。
でもこれは、「実際にいるお客さま」の声を生かしてこそのペルソナを使うからなんです。もし過去の自分をペルソナにしてしまうと、こんなリスクがあります。
- 自分の過去を美化したり、否定的な面を無視してしまうことで、現実的でないペルソナになる
- 社会や技術の急速な変化により、自分が辿ってきたステップが現在の状況に適合しない
- 過去で立ち止まったペルソナは時間の流れを考慮できないので、価値観や行動面で現在の社会環境にそぐわない「ズレたペルソナ」になる
- 自分の過去の経験に固執することで、他者の視点やニーズを見落としてしまう
- 記憶は時間とともに変化し不正確になるので、過去の自分の経験ですら信頼できない可能性がある
- 過去の自分のイメージが自分が目指す世界観と合わない
どれもあるあるです。一言でまとめるなら、過去の自分しか見ていないと、今いるお客さまではなく自分の視点でサービス設計してしまうリスクがあるということ。それで果たして売れるサービスになるでしょうか?
「自分と全く同じお客さまがいる」という思い込みはビジネスの根拠にならないんです。だって、もしかしたら「欲しいと思うのは自分だけ」かもしれません。
自分をペルソナにせずにうまく運用する方法はあるの?
「でもやっぱりペルソナを一から作るのは時間もかかるし難しそう!」
そう感じている女性起業家の方へ、設定手順や運用のポイントをお伝えします。
ペルソナは、一般的にこんなふうに定めます
- ビジネスの方向性を決める
- ターゲット(ビジネスで取り組む市場全体)を決める
- ターゲットの中の架空の1人について、細かな属性を決める
この過程のなかで「リサーチ」や「テストマーケティング」を行います。
本当にターゲットがいるのか、刺さるのか、目標の収益が見込めるのか、といった視点で
ニーズ調査を行なったりサンプルを使って市場の反応を見たり、競合の商品を使っている人に話を聞いたり。
さまざまな手法で「リアルなお客さま」の反応をリサーチします。
もしも方向性やターゲットなど設定することなく、自分の思い込みだけで商品を作ってしまうのであれば
・本当に自分と全く同じお客さまがいるのか
・売れるだけの市場規模があるのか
全く根拠がありませんから、最悪商品が売れないかもしれません。
では、どんなことに気をつければいいでしょうか。
ペルソナ設定の3のお作法
ペルソナを設定するときに、絶対守りたいお作法が3つあります。
- 必ず商品やサービスに対して興味を持つ人であること
- 「こんな人ならいいな」という妄想で作らないこと
- お客様へのアンケートやインタビューなどから生の声を集めること
手法やお作法を意識して作ると、逆に自分をペルソナにしようとしても「できない」ことがわかるかと思います。
人物像よりも悩み・願望にフォーカスする
ペルソナの設定では、まるでプロフィール帳のような「属性」を決める作業があります。
どこに住んでいて、何歳で、家族構成は、どんな性格で・・・
このような情報を把握することで、よりペルソナさんの抱える悩みや未来への願望がリアルになっていくのですが・・・
こうしてペルソナさんという人物を作り込みすぎると時間もかかりますし、いつのまにか「悩み」や「願望」を見失うこともあるのです。女性起業家のような個人事業主ならなおのこと、ひとりで時間をかけるべきじゃないことかもしれません。
重視すべきは「悩み」「願望」であると意識しながら作りましょう。時短のために、専門家やAIに頼ることもおすすめですよ。
シンプルに作る
ペルソナ設定について様々なテンプレートがネット上に溢れています。これをかき集めて項目を並べると、実際のあなたのビジネスにとっては不要な項目も混ざってしまうんです。
例えばセレモニー用のアクセサリーを探しているペルソナ像には、「好きな食べ物」は不要な情報です。逆に「かけるだけで1品目増えるドレッシング」を売りたいペルソナ像には「好きな食べ物」は必要不可欠な情報です。
自分のビジネスの内容に合わせて項目を取捨選択することで、より人物像が想像しやすくなる効果もありますよ。
根拠を大切にする
「この商品ならこんな方に使ってもらえるだろう」という謎の自身から、思い込みで作ってしまいがちなペルソナ像。思い込みで作ると「そんなターゲットは存在しない」可能性があります。
だからこそ、丁寧にリサーチをしておくことが大事です。
・実際に買ってもらえそうな見込み客にインタビューをして直接声を聞く。
・既存のお客さまにアンケートをとる。
・統計データを活用する。
リサーチにはいろんな方法があります!
一人で作らない
初めてペルソナを作るなら、できれば経験者と一緒に作るのをお勧めします。
自分の中に答えがないものを作るとき、人は「あの時の自分だったらどうだったかな」と自分を参考にしてしまいがちです。それでは結局自分をペルソナにしていることと変わらないんです。
他人からの目や視点を反映することで、偏りや思い込みを取り除くことができますよ。
→ブランディングサポートではペルソナ設定もカスタマイズ可能です
運用しながらペルソナを最適化していく
どんなマーケターでも1発で100%効果のあるペルソナを設計することはできません。
時代の流れや市場の変化でお客さま側の行動も悩み・願望もどんどん変化していきます。(しかも変化のスピードが昔より速くなっています)
だから、定期的にブラッシュアップをして、戦略も見直していくのがおすすめです。
まとめ
ペルソナを設定するまえに、このような大前提を意識することも大事です。
- 「自分が欲しいサービスだから」はビジネスの根拠にならない
- 自分の乗り越えてきた経験は十分な市場規模があるのか?
- ターゲットの生の声が反映されないとお客さまに買ってもらえない
自分自身をペルソナにすることは危険がいっぱいです。ビジネスの方向性にあったターゲットの「生の声」を集めて作ることでペルソナの効果が高まりますよ!